2020-01-01から1年間の記事一覧
さて、アッシリアに関する記事では、「なぜ1400年も続いたのか」という問いに対して自己同一性の観点から見ていきました。自己同一性とは「自分と他人を区別し、自分が自分であると認識すること」です。先の記事では、アッシリアは土地=神アシュールを軸と…
6. まとめと課題 ― 高校世界史におけるアッシリア像を考える 一連の記事の冒頭で掲げた二つの問いは、「アッシリアが1400年続いたとは、一体どのような事態を指すのか」「アッシリアの政策は本当に『強圧的で苛酷』なものであったのか」というものでした。こ…
4. アッシリアの対外政策 ― アッシリアはバビロニアとどのような関係を結んだか 本筋に戻りましょう。本節では、ここまでで紹介したような同一性を有したアッシリアが、他地域に対してどのように関わったのかを見ていくことにします。それは、記事①で引用し…
3. 神アシュール像の欠落 やや横道にそれるのですが、神アシュールと土地アシュールの結びつきを考察するうえで興味深いのが、アッシュル・バニパルの父エサルハドン (在位前668-627年) が作成した契約文書、そこにおされた印章です *1。エサルハドンは息子…
2. アッシリアの同一性とはどのような性格のものであったか アッシリアについて研究している渡辺和子さんは、アッシリアの一貫性を歴史的一貫性と宗教的一貫性、そして「アッシュル」という名の一貫性に求めています (文献②:288-93)。以下では渡辺さんの他の…
1. アッシリアに関する 2 つの疑問 高校1年生のときに、世界史の授業を聞いていて、疑問に思ったことが2つありました。どちらもアッシリアに関するものです。 一つ目は、「アッシリアが前 2000 年紀から前 612 年まで 1400 年近くも続いた」とは、いったいど…
1. 本記事の目的 2. システムとは何か 3. ウォーラーステインの提示した世界史像 4. 世界システム論のなにが新しかったのか 1. 本記事の目的 ここでは、世界システム論について説明します。とくに、世界システム論における「システム」とは何を指し、それが…