世界史を、もう少し考える

高校教員が、世界史や社会学についてあれこれと書きます。(専門は社会学です)(記事の内容は個人によるものであり、所属する団体等とは一切関係はありません。)

文献紹介

文献紹介:初沢亜利『東京、コロナ禍。』 ~写真から考える、コロナ禍がもたらしたもの~

改めて緊急事態宣言が出されそうになっている今だからこそ、おススメしたい写真集があります。コロナ禍の東京の姿を、約4か月という短いスパンで切り取った、初沢亜利『東京、コロナ禍。』(柏書房,2020) です。 私も最近よく写真を撮るのですが、写真という…

[文献紹介] 見田宗介ほか編『[縮刷版]社会学文献事典』(弘文堂,2014)

今更『社会学文献事典』を購入したのですが、縮刷版があるならなぜもっと早く買わなかったのか……とものすごく後悔したので、紹介しておきます。図書館で利用したことは何度もあったのですが、いざ縮刷版として手元に置いてみると、そのコンパクトさと汎用性…

吉見俊哉『都市のドラマトゥルギー』(河出文庫,2008) 第四章 要約&コメント

第4章 盛り場の1970年代 Ⅰ トポスとしての「新宿」—— 上演Ⅳ (p.268-95) 〇 盛り場としての新宿 ターミナル駅として栄えた新宿は、同時に盛り場としての顔も有していた。町の成り立ちに関わる遊郭、娼家、戦後産声を上げ独特の共同性を有した闇市、これらが…

吉見俊哉『都市のドラマトゥルギー』(河出文庫,2008) 第二章で登場する単語の紹介

—『都市のドラマトゥルギー』第2章で登場する用語紹介— この記事では、『都市のドラマトゥルギー』2章で登場する聞きなれない単語や、江戸・明治の盛り場をイメージするうえで重要と思われる単語について解説を加えていく。ユーザーフレンドリーな気分なので…

吉見俊哉『都市のドラマトゥルギー』(河出文庫,2008) 第二章 要約

第2章 博覧会と盛り場の明治 Ⅰ 原型としての博覧会—— 上演Ⅰ (p.122-54) 〇 民衆に比較のまなざしを求める博覧会 「博覧会は江戸の見世物とは本質的に異なる、新しい秩序の空間を成立させる」ものであり、それこそが近代的都市空間の原型をなしていくものであ…

映画・アニメ・マンガから考える、現代社会と倫理

現代社会・倫理の授業では、アイデンティティや生命倫理、哲学史などの内容を扱います。今回は、それらの内容に関わる映画や書籍を紹介することにしましょう。基本的に、高校生でも見られるもの・読めるものだけを挙げていくことにします。ブログに挙げるに…

文献紹介:大島隆『芝園団地に住んでいます』(2019)

そういえば、ちょっと前に読んでとても面白かったのに、どういうところを面白いと思ったのか書いていなかったなと思い出し……。大島隆『芝園団地に住んでいます 住民の半分が外国人になったとき何が起こるか』(明石書店,2019) を紹介してみます。 埼玉県蕨市…

論文紹介 : 大久保桂子「戦争と女性・女性と軍隊」(1997)

『講座岩波 世界歴史25 戦争と平和』(1997) より「戦争と女性・女性と軍隊」を紹介します。16世紀常備軍の姿を思い浮かべるにあたって参考になる論文です。 戦争と女性というものを考えるときに、私たちは「銃後の貢献」をする姿を思い浮かべがちです *1。し…

スメルサー『社会科学における比較の方法』 全体の内容と意義

先の記事では、スメルサー『社会科学における比較の方法』3章の内容をまとめました。 以下では、3章の内容と絡めながら、本書全体の議論の再記述を試み、本書の意義について検討します。

スメルサー『社会科学における比較の方法』 : ウェーバーとデュルケムの方法論的な差異について

本記事は、スメルサー『社会科学における比較の方法』(玉川大学出版部,1976=1988) 第三章「比較社会学のプログラム」の内容をまとめたものです。この記事でウェーバーとデュルケムの方法論的な差異を確認したうえで、次の記事にて本書全体の内容をまとめます…

文献紹介:木畑洋一『20世紀の世界』(2014) に関するコメント

先日、『20世紀の歴史』をまとめました。 もう少し、木畑『20世紀の歴史』について掘り下げておきましょう。 〇 コメント:本書の意義と、本書を読み解く視点 まず、本書の意義を明らかにしたうえで、次に「国民国家の形成」と「地域統合」という視点から本…

文献紹介:木畑洋一『20世紀の世界』(2014)

本書は20世紀の歴史を、植民地化されていた地域まで視野に含めながら記述しなおすものです。西洋中心の歴史観から見ると第二次世界大戦と冷戦の間には何か大きな分岐があるように見えてしまうのですが、植民地にとってはそうではありません。戦後、彼らにと…