世界史を、もう少し考える

高校教員が、世界史や社会学についてあれこれと書きます。(専門は社会学です)(記事の内容は個人によるものであり、所属する団体等とは一切関係はありません。)

アニメ批評

『平成たぬき合戦ぽんぽこ』に見る戦後史:あるいはこの社会が通り過ぎた景色について

0. 戦後日本社会が通り過ぎてきた光景について考える 『オトナ帝国』について書いた勢いで、『平成たぬき合戦ぽんぽこ』(以下、『ぽんぽこ』) と戦後日本社会についても書いてみようと思う。この映画から、日本社会の何を考えていくことができるだろうか。 …

『オトナ帝国』というレトロトピア (おわりに):『オトナ帝国』の今日における価値と限界

おわりに:『オトナ帝国』の今日における価値と限界 さて、本記事では冒頭で『オトナ帝国』の今日における価値と限界を確認していくという目標を提示した。これを意識しながら、本記事を通じて明らかになったことをまとめておこう。

『オトナ帝国』というレトロトピア (第五節):家族というイデオロギー、『オトナ帝国』の限界

5. 家族というイデオロギー、『オトナ帝国』の限界 かなり長い道のりにはなったが、以上で我々は、イエスタディ・ワンスモアがどのような組織なのか (3節)、彼らはどのような価値観の前に敗北するのか (4節) を確認することができた。そしてその果てに、実は…

『オトナ帝国』というレトロトピア (第四節):野原一家はなぜ勝利するのか

4. 野原一家はなぜ勝利するのか 以上のように見ていくと、イエスタディ・ワンスモアはとても周到な組織であり、また彼らは近年の政治シーンをある程度まで反映した存在であると見ることができる。もちろん、製作者らが映画製作当時にどこまでこれを意識した…

『オトナ帝国』というレトロトピア (第三節):イエスタディ・ワンスモアの思想

3. イエスタディ・ワンスモアの思想 「夕やけの赤い色は思い出の色 涙でゆれていた思い出の色 ふるさとのあの人の あの人のうるんでいた瞳にうつる 夕やけの赤い色は想い出の色」 (「白い色は恋人の色」,作詞:北山修) 3. イエスタディ・ワンスモアの思想 3.…

『オトナ帝国』というレトロトピア (第二節):なつかしさを共有できる「未来」

2. なつかしさを共有できる「未来」 2. なつかしさを共有できる「未来」 2.1 高度経済成長期の虚像 2.2 高度経済成長期の実像 2.2.1 くりかえす倒産の波 2.2.2 国民所得倍増計画がもたらしたもの 2.2.3 集団就職者が経験した高度成長期 2.2.4 「明るいお祭り…

『オトナ帝国』というレトロトピア (第一節):「昭和30年代」ブーム

1. 「昭和30年代」ブーム 最初に、この映画が生み出された背景である昭和30年代 (的なものの) ブームに触れておきたい。ゼロ年代を通じて、昭和文化を愛好するブーム、昭和30年代ブームが存在した。このブームは今日やや落ち着いているため『オトナ帝国』公…

『オトナ帝国』というレトロトピア (はじめに):『オトナ帝国』の現在性を見る

はじめに 東京オリンピックが開催されようとしている。たぶん……。おそらく……。コロナ禍という未曾有の事態のなか、日本は東京オリンピックのほかに大阪万博まで控えている。果たしてそれは成功するのだろうか……というか開催できるのだろうか…………は、私が考え…

映画・アニメ・マンガから考える、現代社会と倫理

現代社会・倫理の授業では、アイデンティティや生命倫理、哲学史などの内容を扱います。今回は、それらの内容に関わる映画や書籍を紹介することにしましょう。基本的に、高校生でも見られるもの・読めるものだけを挙げていくことにします。ブログに挙げるに…