世界史を、もう少し考える

高校教員が、世界史や社会学についてあれこれと書きます。(専門は社会学です)(記事の内容は個人によるものであり、所属する団体等とは一切関係はありません。)

2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

文献紹介:初沢亜利『東京、コロナ禍。』 ~写真から考える、コロナ禍がもたらしたもの~

改めて緊急事態宣言が出されそうになっている今だからこそ、おススメしたい写真集があります。コロナ禍の東京の姿を、約4か月という短いスパンで切り取った、初沢亜利『東京、コロナ禍。』(柏書房,2020) です。 私も最近よく写真を撮るのですが、写真という…

『平成たぬき合戦ぽんぽこ』に見る戦後史:あるいはこの社会が通り過ぎた景色について

0. 戦後日本社会が通り過ぎてきた光景について考える 『オトナ帝国』について書いた勢いで、『平成たぬき合戦ぽんぽこ』(以下、『ぽんぽこ』) と戦後日本社会についても書いてみようと思う。この映画から、日本社会の何を考えていくことができるだろうか。 …

『オトナ帝国』というレトロトピア (おわりに):『オトナ帝国』の今日における価値と限界

おわりに:『オトナ帝国』の今日における価値と限界 さて、本記事では冒頭で『オトナ帝国』の今日における価値と限界を確認していくという目標を提示した。これを意識しながら、本記事を通じて明らかになったことをまとめておこう。

『オトナ帝国』というレトロトピア (第五節):家族というイデオロギー、『オトナ帝国』の限界

5. 家族というイデオロギー、『オトナ帝国』の限界 かなり長い道のりにはなったが、以上で我々は、イエスタディ・ワンスモアがどのような組織なのか (3節)、彼らはどのような価値観の前に敗北するのか (4節) を確認することができた。そしてその果てに、実は…

『オトナ帝国』というレトロトピア (第四節):野原一家はなぜ勝利するのか

4. 野原一家はなぜ勝利するのか 以上のように見ていくと、イエスタディ・ワンスモアはとても周到な組織であり、また彼らは近年の政治シーンをある程度まで反映した存在であると見ることができる。もちろん、製作者らが映画製作当時にどこまでこれを意識した…

『オトナ帝国』というレトロトピア (第三節):イエスタディ・ワンスモアの思想

3. イエスタディ・ワンスモアの思想 「夕やけの赤い色は思い出の色 涙でゆれていた思い出の色 ふるさとのあの人の あの人のうるんでいた瞳にうつる 夕やけの赤い色は想い出の色」 (「白い色は恋人の色」,作詞:北山修) 3. イエスタディ・ワンスモアの思想 3.…