世界史を、もう少し考える

高校教員が、世界史や社会学についてあれこれと書きます。(専門は社会学です)(記事の内容は個人によるものであり、所属する団体等とは一切関係はありません。)

近現代史-日本の近代と法意識

日本の近代と法意識 ― 青木人志『「大岡裁き」の法意識』(2005) から ⑥

6. 法意識論の限界 以上で、冒頭で掲げた (1)(2)(3) の問いを法という観点から扱うことができたかと思います。(1) 法分野における近代化とは、宗教の分野が衰退し法システムが分出することに求められるが、(2) 日本においてはその分出が不十分な側面があり、…

日本の近代と法意識 ― 青木人志『「大岡裁き」の法意識』(2005) から ⑤

5. 隣人訴訟における法意識 ― 訴訟は冷淡であり、人間関係を壊すものである 訴訟回避の話に戻りましょう。穂積は個人主義的なボアソナード民法が「冷淡」であるとしたのですが、このように考える精神はどこかで訴訟回避の話へとつながっているように見えます…

日本の近代と法意識 ― 青木人志『「大岡裁き」の法意識』(2005) から ④

4. 「民法典論争」における法意識 ―「私権」は極端個人本意であり、忠孝を滅ぼすものである 紹介した青木の著書は新書でありかつ内容も平易なので、数時間あれば読むことができます。そこで、ここでは著書の内容を大きく取り上げるのは避けることとし、代わ…

日本の近代と法意識 ― 青木人志『「大岡裁き」の法意識』(2005) から ③

3. 日本人と法意識論 ― 〈これは法=権利である / そうではない〉と問う姿勢は日本に根付いたのか 村上の論の細かい妥当性はさておき、確かに日本人は訴訟という事態をアブノーマルなものと捉えているように見えます *1。それは訴訟件数を比較してみるだけで…

日本の近代と法意識 ― 青木人志『「大岡裁き」の法意識』(2005) から ②

2. 法と近代 ― ルーマンの機能分化論から まず、世界史における「近代」とは何でしょうか。それをどのようなものとして捉えればよいのでしょうか。 社会学者ニクラス・ルーマンは、近代化を諸システムの機能分化という観点から捉えました。その内容の一部を…

日本の近代と法意識 ― 青木人志『「大岡裁き」の法意識』(2005) から ①

1. 新教科「歴史総合」を見据えて ― この教科の内容を充実させるためには、何を考えねばならないか *1 新教科「歴史総合」を控えて、多くの社会科教員は少なからぬ戸惑いを覚えているかと思います。その戸惑いの内実は様々であると予想できるのですが、何よ…