世界史を、もう少し考える

高校教員が、世界史や社会学についてあれこれと書きます。(専門は社会学です)(記事の内容は個人によるものであり、所属する団体等とは一切関係はありません。)

近世史-中国

中央ユーラシア史から見るモンゴル ー「大帝国」の来歴と内実 ⑤

5. まとめと展望 本稿が最初に掲げた問いは、(1) なぜモンゴルは、13・14世紀に人類史上最大の版図を実現しえたのか、より正確には、そもそも「人類史上最大の版図を実現する」とはどのような事態を指すのか、そして (2) 彼らはしばしば「残虐な存在」「破壊…

中央ユーラシア史から見るモンゴル ー「大帝国」の来歴と内実 ④

4. モンゴルの支配システム さて、前章ではユーラシア大陸の歴史を概観してきた。スキタイや匈奴から、金や宋まで続く長い歴史を扱ったが、朧気ながらも遊牧系王朝の基本パターンが見えてきたのではないだろうか。匈奴の作り上げた中央・右翼・左翼へと広が…

中央ユーラシア史から見るモンゴル ー「大帝国」の来歴と内実 ③

3. モンゴル帝国前夜 : 帝国システムの前身と、中央ユーラシアの多極化状況 本章ではモンゴル帝国出現前夜までの中央ユーラシア史を見ていく。ここからは、① モンゴルが拡大した前史的要因であるユーラシア大陸多極化の様相と、② モンゴル帝国の支配システム…

中央ユーラシア史から見るモンゴル ー「大帝国」の来歴と内実 ②

2.「野蛮なモンゴル」というイメージの構成 : モンゴル研究に付随する偏りについて モンゴルの歴史を見ていく前に、ここでは「野蛮なモンゴル」というイメージがどのように構成されてきたのかを論じる。そうしたイメージが形成された経緯と理由の一側面を明…

中央ユーラシア史から見るモンゴル ー「大帝国」の来歴と内実 ①

1. 本稿の問いと意義:中央ユーラシア史とモンゴルを世界史に位置づける 1. 本稿の問いと意義:中央ユーラシア史とモンゴルを世界史に位置づける 1-1. 問い:モンゴルの治世とはどのようなものであったか 1-2. 意義:中央ユーラシア史から見る世界史と、その…

中国史における都の変遷と、グローバル・ヒストリーのなかの中国 ③

3. グローバル・ヒストリーのなかの中国史 以上で、中国史を位置づける枠組みを論じてきた。簡単にまとめておくと、ユーラシア大陸を一つのものとして捉える視座が重要であり、とくに東部ユーラシア (中国) の歴史は、その内部事情だけではなく、遊牧地帯と…

中国史における都の変遷と、グローバル・ヒストリーのなかの中国 ②

2. 中国史の枠組みを問う ― 妹尾達彦の歴史観変遷とグローバル・ヒストリー — 2.1 内在的変化論と外在的変化論 最初に、本稿の主な参考文献を紹介しておこう。本稿は、『岩波講座 世界歴史9 中華の分裂と再生』に収録された、妹尾(せお)達彦「構造と展開 中…

中国史における都の変遷と、グローバル・ヒストリーのなかの中国 ①

また、読書会のために10日程度で書いたものです。 受験とかで中国王朝の都を問う問題がよく出てきますが、「実際のところそれを知っていると何がわかるのか」、もう少し明瞭に言うと、「中国王朝の都は、歴史のどういった側面を反映しているのか」。これを書…