世界史を、もう少し考える

高校教員が、世界史や社会学についてあれこれと書きます。(専門は社会学です)(記事の内容は個人によるものであり、所属する団体等とは一切関係はありません。)

[文献紹介] 見田宗介ほか編『[縮刷版]社会学文献事典』(弘文堂,2014)

縮刷版 社会学文献事典


 今更『社会学文献事典』を購入したのですが、縮刷版があるならなぜもっと早く買わなかったのか……とものすごく後悔したので、紹介しておきます。図書館で利用したことは何度もあったのですが、いざ縮刷版として手元に置いてみると、そのコンパクトさと汎用性の高さに感動しました。




 本書は名前の通り、社会学の重要文献の要約がまとめられた事典です。編集方針として、可能な限り「author abstract (著者自身による要約)」を掲載するということが掲げられており、翻訳本の場合は翻訳者、いずれも困難な場合は当該分野における代表的な研究者が記事を執筆しています。
 
 また、基本的なコンセプトに「読む事典と調べる事典という二つの役割を果たしたい」ということが掲げられており、そのため「収録文献の解題の全体を、100点の「基本文献」と、約900点の「重要文献」という2部に分け、第Ⅲ部に講座や全集の内容の一覧」がつけくわえられています (:ⅲ)。

 この、「読む事典」としても使えるというコンセプトが秀逸で、例えば最初の重要文献100点はそれぞれが見開き1ページで解説されています。いくら社会学に関わっているものであれど、古典的大著などを次々読破していくことは困難です。大抵の場合は概要を読んでからその本を (どれくらいの真面目さで) 読むべきか決めるのであり、そうした方針決定の材料としてこの要約は非常に有益です。長すぎず短すぎずといういい塩梅で、社会学の基本的な考え方を知りたければ、この文献要約を一から通読していくこともできます。

 続く900点の重要文献も、紹介の文量は少ないですが、非常に参考になります。通読するというよりは、本文献事典の付録「社会学文献表」と併せて活用するのがおススメです。「社会学文献表」では「理論・思想」「家族」「都市」など全26のテーマに沿って社会学の重要文献が一覧化されており、それを参考に本事典をめくれば、あるテーマを語るうえで何を読んでおくといいのか、あるいは自分が読むべき本としてどういったものがあるのかが大体わかるようになっています (変わった本から報告書まで多様なラインナップが掲載されているのも面白いです)。

 以上、紹介でした。さすがに本事典から社会学に入門していくことは難しいと思いますが、社会学という森に入った後のガイドブックとしては非常に有益でしょう。値段もお手頃ですし、社会学を専攻されている方は (学部生であっても) 絶対に買うべき一冊です。一応欠点として、本事典はもともと1997年に出版されたものであり、それ以降の文献を収録することができていないため、やや内容の古さが気になるということは挙げておきます。そこら辺のカバーは自分でやらないといけないので、あまり妄信しすぎるのはいけません。